大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和25年(れ)1763号 判決

本籍

岡山県上道郡幡多村大字関一四番地

住居

岡山市内田西本町一六三番地

飲食店営業

徳田等

明治四〇年一〇月二九日生

右の者に対する賍物故買、賍物牙保被告事件について、昭和二五年六月二九日広島高等裁判所岡山支部の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人鍜治利一の上告趣意第一点について。

罰金刑と同時にその罰金を完納することのできない場合における労役場留置期間の言渡をするにあたり、留置一日に相当する金銭的換算率を決定するには、必ずしも自由な社会における勤労の報酬額と同率又は貨幣価値の変動と比例して定められるべきものではなく、従つて金千円の罰金不完納の労役場留置期間の割合を一日金二〇円と定めても、基本的人権と法の下における国民の平等を保障した憲法の条規に反しないことは既に当裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一四二六号同二四年一〇月五日大法廷判決昭和二五年(れ)第一二五五号、同年一二月八日第二小法廷判決参照)。なお、所論は未決勾留日数の法定通算に関する罰金等臨時措置法七条四項を援用するけれども、未決勾留日数の法定通算と罰金不完納の場合における労役場留置とは必ずしも同列に断ずることを得ないばかりでなく本件犯行は同法施行前の行為にかかり、従つて本件犯行に対する罰金額は金千円を超えることを得ないのであるから原判決が労役場留置期間の割合を一日金二〇円に定めたことを以つて、所論の如く、憲法一四条に違反するものということはできない。従つて論旨は理由がない。

同第二点について。

公判廷において証拠調をした書類を公判調書に記載するには、如何なる書類につき証拠調が為されたかを明確にすれば足り、必ずしもその書類一々につき個別具体的に掲記する必要のないことは、当裁判所のしばしば判例とするところである。そして、原審公判調書には、所論の如く、岡山地方裁判所昭和二二年(公)第六四〇号第六四一号事件の記録中の関係人に対する各聴取書につき証拠調をした旨の記載があり、所謂小島昌一郎及び矢吹倫男が本件犯罪の関係人であること及び同人等に関する所論各聴取書が右記録中に編綴されていることは記録上明かであるから、右各聴取書につき証拠調が為されたことは極めて明かである。従つて、原判決には所論の如き違法はなく、論旨はその理由がない。

よつて、刑訴施行法二条、旧刑訴四四六条に従い、全裁判官一致の意見を以つて、主文のとおり判決する。

検察官 安平政吉関与

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例